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私の趣味は競艇です。今では名称が″ボートレース″と呼ばれるようになりましたが、″競艇″のがしっくりきます。″競艇″のほうが鉄火場というかギャンブル場という雰囲気があっていいなぁと思うので。

″競艇″との出会いは22才のときに、寿司屋でバイトをしていたときです。
就職も決まった大学４年の夏、短期バイトの斡旋所で見つけた寿司屋の出前の仕事。場所は東京の豊海埠頭の先っぽにある『豊海寿司』。
そこには３人の寿司職人さんがいました。坊主頭でいつもニコニコしている50代の大将。クールな40代の常さん。この中では若手の30代のたけちゃん。そして、年配の女性が２人。レジ係りはオーナーの奥さん。ホールは大将の奥さんというラインナップ。
私の仕事は基本出前で、注文が入るとスーパーカブで寿司を届けて代金を回収してくるという簡単なもの。ただ、このスーパーカブの簡易ミッションというものに慣れていなく何度かコケました。そして出前の寿司を駄目にしてしまったり、寿司桶を割ってしまったりしました。でもそんなときも大将は怒ることもなく、「いいじゃないですか〜」といつもの口癖でニコニコしています。そして、この寿司屋での賄いが最高に美味しかった。たけちゃんが作ってくれる和食料理なのですが、もう何を食べても美味しい。仕事も楽だし、人もいいし、食事も美味しいと３拍子そろった最高のバイトだったので、週末は喜んで働きにいっていました。
そして、ここの職人さん達が、職人さんらしくギャンブル好きだったわけです。とくに競艇。大将の奥さんに聞くと、いつもニコニコしている大将が、競艇場に行くと人が変わったようにレース中に鬼の形相で怒鳴りちらすというのです。「いけー！」とか「下手くそ―！」とか「ボケー！」とか。
そんなこんなでギャンブル好きの私は競艇に興味を持ち、競艇場にいってみたわけです。平和島だが多摩川だか戸田だったかは忘れましたけど。そうしたら当たるわけです、舟券が。競艇は６艇で争うレースなので、オッズは低いですが、２連単で30通りしかないので当たりやすい。競馬は最大で18頭もいるので、あんまり当たったためしがなかったので、「こりゃ競艇のがいいわ」と競艇にズボッとはまりました。
あるとき、私が競艇場デビューを果たしたと聞いた大将が、「競艇いったんだって？」と聞いてきたので、競艇場で目にした予想屋さん（100円払うと予想の目を書いた小さい紙を渡してくれる）のモノマネならぬ声マネを「はい〜、一本勝負〜、一本勝負〜」とだみ声で披露しました。そうしたら大将が「なに言ってんだか、馬鹿だね〜」と言いながらニコニコしてます。大将にウケて嬉しかったのを覚えています。

その後、就職したものの一年半で辞め、友人の家を渡り歩いているときに、「暇だから競艇でも行くか」と多摩川競艇で開催されていたＳＧレース（一番グレードが高いレース。競馬でいうとＧ１に相当）に行ってから、競艇が私の生活に組み込まれていきました。
25才のときからなので、21年間かかさずＳＧ（今は年間に８回開催）の優勝戦は購入しています。というのも、20代のある頃、「俺は一生競艇をやり続ける！」という強い決意をしてしまったからです。「そんな決意って必要？」と思う人もいるかもしれませんが、私は忠実に20代の決意を守ってきました。といっても、ＳＧの優勝戦を決まった額だけ買うのが今のペースなので、おこずかいで遊んでいるようなものですけど。でもでも、私にとって一番大切なのは競艇をやり続けることなのです。
そして、20年以上もやり続けていると、競艇のレースが私の人生のしおりのような役割をしていると感じます。「あのレースのときには、俺はあんなことをしていたな」とか。それは、ある曲を聴いたときに、昔の恋人との思い出がよみがえってくるのと似たようなものなのです。

こうやって文章にしてみると、私が競艇を好きになった理由の一つは、あの寿司屋の職人さん達を好きだったからなんだなぁ〜と思います。「好きな人の興味があるものを自分も好きになる」なんて、「あなた色に染めて」とつぶやく乙女のようで気恥ずかしいですけど．．．
しかし、私は競艇に出会えてとても幸せです。