他院で満足できなかった方、改善しなかった方が多数来院！本気で改善したいなら当院へ

私は自分の店を持つ以前、10年ほど出張がメインのマッサージ店に勤めていました。
都内の自宅などをグルグル伺っていたのですが、それはそれは色々な人たちがいたものです。いろいろな職業、人種、キャラクターなどなど、人生勉強をさせてもらったような気がします。
さて、施術的に思い出に残っているのが、「ここだけやってくれればいいから」と身体の一部分だけを指定してくるお客さんです。その部分というのは人それぞれなのですが、どうも癖になる部位というのもあるようです。
今回はその一つ、『棘下筋』です。

棘下筋はローテーターカフ（回旋筋腱板）と呼ばれる四つの筋のひとつで、上腕骨と肩甲骨を繋いで肩の安定度を保ちます。肩甲骨の後面に薄く広がった筋肉です。
この筋肉をほぐしてもらいたがったのが、Iさんでした。
Iさんの趣味はゴルフでなかなかの腕前。ラウンドも週に数回だったようです。そして、棘下筋が凝ってしまう原因はもちろんゴルフ。
ゴルフクラブはそれなりの重さがありますので、それをブンブン何度も振り回すわけですから、クラブを握った腕が引っ張られ、その付け根である肩周囲の筋肉も引っ張られます。それら肩周辺の筋肉の中でも一番ダメージをうけやすいのが棘下筋です。
Iさんは特に左側の棘下筋がお好みでした。平べったい棘下筋のなかにも筋張った部位があり、そこをコリコリすると喜んでいたものです。
私の臨床での経験からすると、女性のゴルファーは右の棘下筋のほうが凝っている印象があります。推測するに、男性に比べて女性のほうが筋力は少ないので、ゴルフクラブのアイアン（ウッド系より重い）を振った時にフォロースルーでクラブごと右腕が引っ張られることに棘下筋が耐え切れなくなることが考えられます。

女性でいうと、赤ちゃんを抱っこしているお母さんもこの棘下筋が凝ります。いわゆる『抱っこ筋』のひとつです。赤ちゃんを抱いた腕ごと肩周辺の筋肉が引っ張られることが原因です。
人それぞれ抱っこしやすいほうの腕はあるので、よく抱っこする側の棘下筋が凝ります。
ただ、保育士さんなどは両腕抱っこを駆使していたりするので、両方の棘下筋がゴリゴリに凝っています。

さて、そもそも身体の一部位の筋肉だけをほぐし続けるのは身体に対して良いことなのかという問題があります。
結論としては、身体に対しては悪影響です。
凝り固まった筋肉をほぐせば血流がよくなり、筋肉もゆるんできます。しかし、それをずっと続けると筋肉を傷めることになります。さらに、筋肉の防御反応として、筋肉が固くなるという逆効果に。
では、なぜ同じ部位をずっとやってもらいたがるのか？
それは、長くほぐされていると感覚が麻痺してくるので、コリが楽になっていると錯覚するからです。また、その麻痺した感覚というのが、少しビリビリした感じがあったりして、それが癖になっていたりもします。
マッサージ機などを長時間うけすぎて逆に身体が痛くなった経験がある方などはわかるかと思います。うけている間は気持ちいいのですが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」で、やり過ぎは感覚を麻痺させ、筋肉を傷め続けてしまい、のちのち痛くなるという始末。

ですので、私は話を聞いてくれそうな人には「あんまり同じ部位をやり過ぎると逆に筋肉を傷めてしまいますよ」と言っていましたが、あまり受け入れてもらったためしがありません。
お客さんのなかには、そういう説明をすると、「いいからやってくれ！」と言う人もいました。
このように、出張でお客さんのもとにいってマッサージをするというのは、店でお客さんに対応するのとは違った難しさがあったりします。
サッカーでは、戦う試合場所はホームとアウェーがありますよね。ホームでは味方の客が沢山いるので有利に戦える一方、アウェーでは敵陣の野次などもあり応援的には心もとなかったりします。
出張のマッサージは、このアウェー感があるんですね。基本、お客さんの自宅に赴くので、まさにお客さんのホームでの試合という感じです。なので、あまりお客さんに強く言えなかったりする空気感があったりします。

今の私は、自分の店でお客さんを迎え入れて施術をしているので、「ここだけをやってくれ」と言われても、ちゃんと悪い影響があると説明をして、同じ部位だけを施術することはありません。
そもそもが、そういうことを言う人自体がほとんどいないのが実情です。
それだけ、出張マッサージを受ける人は要求がピンポイントなのかもしれませんね。

普段の施術で棘下筋をほぐしているときに、「そこ気持ちいいですね」と言われたりすると、Iさんのことを思い出します。
そんな筋肉と人が結びついた思い出が私にはいくつかあったりします。
これは職業病なのでしょうか？