原始反射を統合させたその先に
原始反射は、近年、発達支援や子育ての観点から注目されています。
今回は、小脳の機能から考えていきます。
原始反射が残っていると体の動かし方が不器用という特徴が現れます。しかし、原始反射の統合エクササイズを続けていくと、それまでよりも体のコントロールが利くようになっていきます。それは、原始反射を卒業していくという一面もありますが、小脳の機能が向上しているともいえるのです。不器用さは原始反射の残存だけが要因ではなく、小脳の発育不全による要因もあります。
小脳の働きとして、無意識下での動作の修正があり、そのデータを小脳に貯蔵しています。小脳の機能が低下していると、動作の修正が利かないので、動きが不器用になります。不器用な人はワンパターンの動きしかできないわけです。一方、器用な人は無意識に修正して最適なパターンを選び取ることができます。
小脳研究の第一人者に伊藤正男博士がいます。日本の脳科学のゴッドファーザーと呼ばれたりもするそうです。博士は、大脳を小脳がバックアップする「内部モデル」という仕組みを提唱しています。そして、自閉症者は、小脳の育ちが悪いせいで、この「内部モデル」をつくることが難しいと博士は述べています。
まずは、「内部モデル」の解説をします。
「内部モデル」を簡単にいうと、脳内でシュミレーションし予測や制御を行うことです。
運動で新しい技術を習得しようと練習しているときは、大脳で手足をどう動かすかを大脳の「内部モデル」で考えつつ行います。大脳で考えてから動くのはスピードが遅れますし、大脳が疲労します。同時に、小脳の中に手や足のシュミレーション・モデルがつくられるといいます。小脳の「内部モデル」は無意識に働きます。
そして、技術が身に付いたときには、大脳の「内部モデル」は、小脳の「内部モデル」に移行します。すると、実際の手や足をどう動かすかを考えなくても、小脳の中のシュミレーション・モデルが無意識に手足を動かしてくれるようになるといいます。そうなると、大脳は使われていないので疲労しません。
このような仕組みは、運動だけでなく、ものを考える場合にも当てはまるといいます。思考の「内部モデル」です。
小脳皮質の神経回路構造は一様なので、計算原理も系統発生的に新しい部分と古い部分で共通だといいます。運動は系統発生的に古い部分の小脳の働きで、思考は新しい部分の小脳の働きです。
思考でも運動と同じように、大脳の「内部モデル」で観念や概念を動かします。そして、その思考がまとまってくると、小脳の「内部モデル」に移行し、無意識に思考が続くということになります。
・運動は、リアル世界で手足を動かす行動。
・思考は、バーチャル世界で観念を動かす行為。
このように運動と思考には類似性が見られます。
そして、小脳の機能低下があると、運動面では「不器用」な特徴が現れ、思考面では「こだわり」が現れます。
「こだわり」はひとつのパターンに固執するわけです。修正したり、新しいパターンを得るには小脳が働かないといけないのですが、そのシュミレーションが働かないので、今までのパターンをやり続けます。
しかし、運動してさまざまな動きのパターンを習得していけば、ズレを直す計算原理を覚えることになるので、小脳の修正機能を向上させることにつながります。そして、小脳の修正機能が向上すれば、思考面にもよい影響を与えるのです。「こだわり」を緩和させることにも関係してくると考えられます。
原始反射の話からは逸脱してしまった感はありますが、運動することで小脳の「内部モデル」を育てていくことが大切なことが伝わればいいなと思います。運動して思い通りに身体を動かせるようになることは、思考面で柔軟に考えることにもつながっていくのです。
<参考文献>
『脳の不思議』/伊藤 正男 (著)/岩波書店、1998年
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原始反射が注目されていることの考察1
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