今まで整体やマッサージを受けたことがないお客さんが来たときに、
「強さ加減は、強いと弱いの間くらいの痛(イタ)気持ちいいくらいがいいですよ。強さが合わなかったらおっしゃってくださいね。」
と説明しています。
施術の押圧が強すぎると、身体が身構えてしまい力が入ることがあるので施術の効果がないばかりか逆効果になることもあります。また、弱すぎても気持ちよさが感じられずこれまた効果がなかったりします。なので、ほどほどの刺激の圧がいいと言われています。
しかし、刺激の好みと言うのは個人差があるものです。
たとえば「辛さ」。
辛い物は味が分からなくなるから食べられないという人から、スープの色が真っ赤っかの辛いラーメンを平気で完食する人まで様々です。
ちなみに辛さがウリの某有名店のラーメンにはまったある男性のお客さんは、その辛さが癖になってしまい週3で通っていたそうですが、身体に異変を感じてから通うのをやめたそうです。病名は『痔』。その辛さに肛門が悲鳴をあげたようです...
また、ジェットコースターなどの絶叫マシンなるものも個人差が分かれる刺激物?かもしれません。
三半規管の問題で乗り物酔いしやすいなどの関係もあるでしょうが、乗ると気持ち悪くなるだけの人から、さらなる絶叫マシンを求めて乗りまくり叫びまくる人もいます。
マッサージの強さの好みは、辛さで例えると分かりやすいかと思います。
・強い刺激の押圧が好きな人は弱い刺激だと物足りない→辛い刺激が好きな人は少々の辛さだと物足りない。
・弱い刺激の押圧が好きな人は強い刺激だと痛いだけで苦痛→辛さが苦手な人は辛すぎると食べられない(味がわからなくなる)。
私個人としては辛い物はとても好き。そして、痛みには滅法弱い。なので、弱い刺激の物足りなさも、強い刺激の苦痛さも分からないではないです。というか、よく分かる。
そして、私の「痛みに弱い」性質が、施術にも影響しているようです。
私は、施術時にお客さんが「痛い」とポロッと言ったときに「ヤバイ」と思い、押圧を弱めてしまいます。私自身が痛がりということもあり、お客さんも痛いのは嫌だろうという考えがよぎるからです。そして、強すぎる刺激は揉み返しの怖れもあるので、このような対処は悪いとは思わないのですが、強い刺激が好みの人からすると物足りないこともあるようです。
というのも、先日、「痛いのが好き」と公言している女性のお客さんから、「先生の施術は弱すぎて物足りない」とのコメントを頂戴しました。この方は、台湾の足つぼマッサージでも特別痛がらせてくれるところが好きらしく、「痛い!痛い!」と叫びわめくことができるのがいいそうです。ただ、やみくもに痛いだけではダメで、しっかり効く感じで痛くしてくれないとダメとのこと。
この女性の言っていることは『痛さ加減』においては私には理解できませんが、『辛さ加減』に置き換えてみれば理解できます。つまり、辛い食事を「うわっ、辛い」と言って食べるのは、ちょっとした幸せでもある。でも、旨みを無視した辛さだけを追求したものは勘弁。とびきりの辛さのなかにも美味しさが欲しいのです。
そして、「痛い!」と叫べるのも、痛いのが好きな人にとってはストレス発散にもなるのでしょう。絶叫マシンの醍醐味も思う存分叫ぶことができるところ。たいして怖くもないジェットコースターでギャーギャー叫ぶのも興醒めでしょうから。
となると、「痛い!」という言葉には「これ以上は無理」という拒否の場合と、「もっと頂戴」というおかわり的な意味合いの場合があるということでしょう。
以前から、私はお客さんに「痛みには強いですか?」と聞いていました。
最近では、先ほどの質問で「痛みに強い」と回答した人には、「痛いのは好きですか?」ともう一歩踏み込んで聞いています。そこで、「好き」とか「嫌いではないです」と言った人には強く押圧するようになりました。「痛い!」と言っていても強さをゆるめることはせず、さらに押します。『痛み』を満喫してもらうために...
ちなみに前述の「物足りない」と言っていた女性に対してですが、痛がるポイントによっては強く施術するようにしました。すると、
「先生は最近、『痛い!』と言うとさらに痛くしてくる」と言って、今度は『痛い!』と言わないように我慢している様子です。
『痛い!』と言わせたほうがいいのか、言わせないほうがいいのか、なかなか奥が深い問題です。