中枢性感作とは?
『中枢性感作(Central Sensitization:CS)』とは、中枢(脳および脊髄)が疼痛の感度を増大する現象です。中枢神経系における痛覚過敏を誘発する神経信号の拡大と考えられています。
大怪我や手術などによる強い痛みを受けると脳にW痛みの記憶Wが刻まれてしまうと考えられています。
すると、ワインドアップ現象(Wind up 現象)が起こる場合があります。痛みを生じない程度の刺激であっても、刺激を受けると痛みが再現されてしまうのです。持続的な痛みが続くと痛みが増大したり広がっていくことが起きてしまいます。
痛覚過敏とアロディニア
痛みに対する中枢性感作というプロセスは、あらゆる種類の慢性疼痛において関わっていると示唆されています。
・痛覚過敏…疼痛刺激への知覚が亢進し、普段よりも強く痛みを感じる症状
・アロディニア…痛みを生じない弱い刺激でも痛みを感じてしまう症状
アロディニアは異痛症とも呼ばれ、片頭痛におけるアロディニアは古くから認識されていました。
過敏症とも関連
中枢性感作は、多種多様な刺激に対する過敏症にも関連していると示唆されています。
光や音、香り、ストレスなどです。
HSP(Highly Sensitive Person:非常に感受性が強く敏感な気質をもった人)にも関連していると考えられています。
中枢性感作の要因
中枢性感作の要因と考えられていることを挙げます。
・脊髄後角での神経細胞の興奮
・下行性疼痛抑制系の機能不全
・視床皮質レベルの興奮性亢進
中枢性感作症候群
中枢神経系の感受性が亢進することが病態に関与している疾患は『中枢性感作症候群(Central Sensitivity Syndrome:CSS)と呼ばれています。
中枢性感作症候群には、線維筋痛症、過敏性腸症候群、慢性疲労症候群、顎関節症、片頭痛を含めた慢性頭痛、慢性骨盤痛障害、化学物質過敏症などが含まれています。
<参考資料>
・『中枢性感作の評価』西上 智彦 シンポジウム:種々の症状を呈する難治性疾患における中枢神経感作の役割の解明とそれによる患者ケアの向上
・『痛覚変調性疼痛の背景にあるメカニズムとその臨床的特徴についての検討』安野広三 シンポジウム:中枢性感作
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