触覚についての考察:識別系触覚と原始系触覚
◇はじめに
感覚を学ぶにつれて、「触覚」についての理解がしっくりきません。
『識別系触覚』と『原始系触覚』についてや、触覚が内受容感覚なのか外受容感覚なのかも曖昧です。
そこで、今回は自分なりに「触覚」をまとめてみたいと思います。
◇識別系触覚と原始系触覚
触覚には『識別系触覚』と『原始系触覚』がある。
・識別系触覚…物の形や大きさを触って弁別する
・原始系触覚…刺激に対して防衛的に働く
そして、外受容感覚と内受容感覚の分類について。

ここで、『識別系触覚』と『原始系触覚』を外受容感覚と内受容感覚のどちらに分類されるのかを考えてみます。
『識別系触覚』は触覚と圧覚でものを分別しているのでしょうから外受容感覚でいいと思います。
『原始系触覚』は温冷覚と痛覚の内受容感覚でしょうか。
しかし、『原始系触覚』には圧覚も含まれる気がします。
そうすると、『原始系触覚』は内受容感覚の要素と外受容感覚の要素があることになる。
こんがらがります。
そもそも、外受容感覚と内受容感覚の区別は諸説あります。
区別が困難な理由は、外部の状況によって内的状態は変化し、内的状態によっても外部状況の捉え方が変わるなど、混然一体となっているからのようです。
私が参考にしたのはこちら↓
◇東京大学学術機関リポジトリ
『内受容感覚の歴史と概念の変遷の検討』緒方万里子
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/2009893/files/edu_63_26.pdf
様々な説があることを前提として、自分が理解しやすくなることを目的に進めていきます。
◇内受容感覚と外受容感覚
『ココロとカラダの痛みのための邪道な心理療法養成講座』からの抜粋。
・内受容感覚(五感に属さない内臓の感覚≒自律神経感覚)
空腹感、窒息感、残尿感や便意、胸のドキドキ感など五感に属さない内臓の間隔の種類は多彩です。
五感が「自分の外の世界」を知覚するためのものであるのに対し、内受容感覚は「自分の中の世界」を知覚するためのものです。
他人からはわからない感覚である『痛み』も、内受容感覚です。
これら内受容感覚の中枢は前部帯状回周辺にあります。痛みの脳内情報処理形でも前部帯状回は中核的役割を果たします。
ものを触った時を例に上げると、触覚はものを触った感覚を通じて、そのものが何なのか?を認識するための、自分の外の世界に対する知覚。温痛覚は、ものを触ることで起きた自分の体の変化(指の温度が下がるなど)を認識するための自分の中の世界に対する知覚。こう解釈するとわかりやすい。
『ココロとカラダの痛みのための邪道な心理療法養成講座』(著)糟間剛
内受容感覚という用語から、身体の内部の感覚とイメージしてしまいますが、皮膚は身体の表面を覆っていて外界と接しているのでしっくりこない。
しかし、温冷覚を例にすると、皮膚で温度変化を認識するのですが、外界と接したことで自分自身に起きた変化を検出している。
皮膚で外気温を測っているのではなく、皮膚に起きた反応で体温を測っているということなのでしょう。
なるほど、内受容感覚ですね。
そして、内受容感覚は、身体内部の生理的な状態を捉える感覚システムで、ホメオスタシスの役割がある。
ホメオスタシス(恒常性)とは、生体の血液ガス、体温、血圧、体液量、電解質濃度などが一定に保たれること。
ホメオスタシスを維持できないと、生体内の変化あるいは生体に迫る危険を感知できなくなり、生命を維持できなくなる。
つまり、内受容感覚は生命維持に重要なわけです。
そうなると、温冷覚と痛覚が内受容感覚で、圧覚が外受容感覚なのも分かります。温冷覚と痛覚は生命の危機になりえるが、圧覚は生命を脅かすまでにはならないと思えるから。
◇触覚を自分なりに考える
ここまでのことで、自分なりに触覚のイメージが掴めてきました。
・原始系触覚…全身を覆う皮膚にある"全身ストッキング"みたいなもの
・識別系触覚…手にある"手袋"みたいなもの
ベースに原始系触覚"全身ストッキング"があり、その上から識別系触覚"手袋"をしている感じです。
"全身ストッキング"が内受容感覚で、"手袋"が外受容感覚。
※手袋はストッキングの下かもしれませんし、ストッキングが変化したものかもしれません。ここでは本題ではないので保留します。
◇まとめ
触覚について、自分なりにイメージができたのでよかったです。
原始系触覚と識別系触覚では活動する脳領域も違うのでしょうが、それはまた別の機会にしようと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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